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誰かの場所の複数

残念な感じです

りゅうおうのおしごと!2巻は面白いよと言うことだよ

りゅうおうのおしごと!2巻を読了したのでさらっと感想を書こうと思います。

おれはラノベ読みとしては相当にヌルい、というか、現行のラノベって冴えない彼女の育て方りゅうおうのおしごと!しか読んでないんですが、白鳥士郎ラノベはだいたい好きです。ラノベ作家って将棋好き多いよね、バカテスの人とか。

で、朝から酒飲みながら喫茶店で読んでたんですけど、もう、終盤ボロッボロに泣いて読んでましたよね。家で読んでいたら声を上げて泣いていた。

りゅうおうのおしごと!を読んだ直後に、スティーヴン・キングの「書くことについて」に書かれた「優れた小説は必ずストーリーから始まってテーマに行き着く」と書かれた一文を思い出していました。りゅうおうのおしごと!はその言葉通りのことをキチンとやっている優れた小説だと、おれは力強く断言します。

コンビニ店長がはてなにいてくれたならあいちゃんのおしっこについて見事な筆致を披露してくれていたと思うんですけど、おれはそういうの出来ないので、妄想全開で白鳥士郎が2巻の後書きに書いた「最も書きたかったテーマ」を忖度したりしよう。あ、ネタバレあるからその辺よろしくです。

おれが将棋を観ていて最も惹かれるモノは何か、と言えば、敗者の有り様であり、目標に到達出来なかった人間の姿です。2015年度の名人戦第四局、優勢の将棋を落とした行方八段の凄絶な投了の様子は網膜に焼き付けられているし、2013年度の王座戦第四局で、声を上げて体を捻りながら敵玉に迫り、負けを自覚して水を口に含み空中を見上げる中村太地六段の姿は、その頃駒の動かし方すら覚束なかったおれにプロの将棋を観ることの喜びを教えてくれました。どっちも相手羽生善治じゃねぇか。

目標に到達出来なかった人間の姿を求めようとすると、プロの姿よりもむしろアマチュアの方に目が向く、というのは将棋ファンにとっては常識になっているはずです。大崎善生の「将棋の子」や故天野貴元の「オール・イン」に詳しいように、プロへの過程における奨励会というシステムの熾烈さや、そこに敗れた人間の生き様は、いつもファンの心を打つからです。

 

りゅうおうのおしごと!に話しを戻すと、語り部であり主人公である九頭竜八一は、物語が始まった時点で圧倒的な強者であり勝者です。公式戦11連敗スタートとは言え、なんせ16歳で竜王ですからね。フリーターのおれに金貸してくれよ。これは3月のライオンの桐山零もそうなのですが、プロの棋士を物語に使う以上、主人公が勝者でないと、成り立ちづらいというのが正直なところだと思います。読んだこと無いけどグラゼニ的な将棋モノがあってもいいと思うのですが、今のところそういう作品は無いはずです。勝負事を物語に使う以上、主人公が勝たないと話しにならないですからね。今のところ、八一は練習将棋を含めて作中で一度も負けていないわけですが、今後敗局の様子がで描かれることになるでしょう。おそらく相手は名人とかで。八一の姉弟子である銀子も八一に練習将棋で2局負けているだけです。そもそも、女流相手に公式戦で50連勝しているわけで、このキャラクターを現時点で負けさせることは、相当に難しい。なので、白鳥士郎はまだ小学3年生であり、棋歴の浅いメインヒロインの雛鶴あいに、「負け役」を担わせて、物語を展開させるという構図を1巻と同様に2巻でも採用しています。

 

雛鶴あいの負け様は凄絶です。1巻では銀子相手に対局中に過呼吸に陥り、声を絞り上げて投了を告げます。2巻では、ダブルヒロインを担当する事になるだろう夜叉神天衣相手に局後簡単な詰みを逃していた事を指摘され、「そっか・・・」と声を上げて泣きます。で、この負けの姿なのですが、これはほぼ間違いなく下記の動画における敗者の様子を参考にしています。


森内名人が冷静に詰みを指摘して子供を泣かす

 

おれはこの動画を見ると毎回ぽろぽろ泣いてしまいます。おれはこの将棋の棋譜を知らないのでこの動画でしか判断できないんですが、玉頭に歩がある状況で金上がりで龍を受けて、龍を切ってれば簡単に詰み、という展開から見るとこの一局が元ネタでは。というか、見てみると7手詰めだしそうなんだろうなぁという感じです。白鳥士郎が著者挨拶で記した「最も心が揺さぶられた対局」もこの一局なのでしょう。あ、でも一手損角換わりとか小学生指さないよな…違うかも…まぁこんなことは観る将なら簡単に推測できるので自慢にも何にもならんのです。当たってようがはずれてようがどーでもよくて、本当に凄いのは、現実を本歌取りして、作品に昇華できる白鳥士郎の筆力です。もうね、声を上げて悔しがる雛鶴あいの姿がいじらしくて可愛くてやべぇんですよ。

 

物語の冒頭では、アマチュア名人である夜叉人天衣の父は名人相手に難解な詰みを逃し、それを八一に指摘されて、自分の能力の限界を悟ります。作品の終盤で、棋歴の浅い天才のあいが簡単な詰みを逃し、おのれの弱さを知り、強くなりたいと願います。おれが読み取った2巻におけるテーマは、「弱さを知ること」です。スティーヴン・キングの言葉通りに、物語がそれを示してくれるわけです。

 

おそらくですが、3巻で描かれる白鳥士郎が後書きに記した「最も書きたかったテーマ」は、夢が潰える瞬間なのだと思います。そこに至る伏線はしっかりと作品中に書かれているわけで、女流棋士を目指す八一の師匠の娘であり、憧れの女性である清滝桂香の決定的な敗北が描かれるというのがおれの予想ですし、そうであって欲しいと願います。まぁ、どうなってても楽しめると思いますが。

 

今後のりゅうおうのおしごと!の展開に期待しつつこのエントリを終わりますが、何度も書くけどシャルちゃんCV小倉唯は殺しにかかりすぎ。買わないぞおれは・・・パチンコでまた負けたんで死にたいです。クソです。

 

 

追記 ツイッタでリツイートしてくれた人のついーと見たら会長と八一の対局は2006年A級順位戦プレーオフの羽生谷川戦みたい?です。知らなかったー。で、更に追記すると夜叉神父と会長の対局は第59局棋聖戦の第1局が元ネタなんだと教えていただきました。よく調べて書いててすげぇなあ、と思います。